横田基地は今どうなっているか
横田基地の撤去を求める西多摩の会事務局長 寉田一忠
はじめに
非人道的な「2つの戦争」を、一刻でも早く止めさせたいと願う世界の平和を願う世論は、米国のトランプ再登場で、先行きへの不透明感を強め、困難に直面しています。
この戦争の背景には、不安定化する自国の覇権を維持強化したい米国の思惑が強く働いていると言われています。加えて、台湾を巡る米国と中国との緊張関係は、一層の困難を生み出しているかのようです。
こうした時、日本は、全国の自衛隊基地の強靭化を進めるとともに、先の「2プラス2」で、横田基地の在日米軍司令部を、戦争を指揮統制する強力な戦争司令部へと進化させることに合意しました。東アジアにおける米国の軍事拠点である日本は、一歩間違えば、沖縄をはじめとして、全国を戦場としかねない危険な道にふみこんだのです。
こうした中、横田基地では12月に入って米インド太平洋宇宙軍が、基地内に在日米宇宙軍を発足させ、基地機能強化が更に進められました。日米同盟強化を米国言いなりに進めることは、米国の覇権争いに深く組み込まれていく極めて危険な道です。
止めどなく進む横田基地の機能強化
1.C17などの大型輸送機の飛来が頻繁になり、大型輸送機用の駐機場建設がなされています。C130Jの配備増やC17の常駐化も計画されています。
2.また、超高空を飛行し、中国大陸の奥まで監視していると思われる、無人偵察機グローバルホークがグアムから持ち込まれ、ほぼ常駐化しています。
3.航空機燃料を大量に貯蔵する地下のタンクの増設、その配給施設や燃料運搬用引き込み線の改修・新設がすすみました。
4.同時に、海兵隊岩国基地から、また太平洋を越えて米本土の基地から、KC135やKC10などの大型空中給油機の頻繁な飛来とその訓練が激しく繰り返されています。
5.ミサイルなどの攻撃を受け、破壊された滑走路を直ちに修復する訓練と、滑走路損傷修復用の装備品・機材などの大型備蓄施設の建設も進みました。
6.横田基地を使った米軍と自衛隊の共同作戦・訓練があたりまえのようになされています。
7.更に、CV22の10機配備のための受け入れ工事、自衛隊用の火薬庫(弾薬庫)の工事も進んでいます。
巨大なB52H戦略爆撃機30年ぶりに飛来
そこに、核攻撃用の戦略爆撃機が、日米安保に基づく「事前協議」もなく、米軍の一方的な都合で飛来するという重大事態が引きおこされました。最近では24年の4月2日、B52H戦略爆撃機が1機、23年7月に続いて突然飛来しました。
4月2日、飛来に気づいた周辺住民が、地元自治体に、北関東防衛局から情報が入っているか問い合わせましたが、全く入っていませんし、基地内に駐機している事実は「部外秘」扱いになっていることが分かりました。
冷戦期は当たり前のように飛来していた戦略爆撃機でしたが、ここ30年間は全く途絶えていたことがいきなり始まったのはなぜか。決してたまたまなどではありません。北朝鮮への威嚇が繰り返される中で、起きた「事件」だったのです。
欠陥機CV22オスプレイは直ちに撤去すべき
23年11月29日の屋久島沖炎上墜落事故発生から8ヶ月、24年7月、やっと出された米空軍の墜落事故調査報告書でも根本原因は不明のままです。
にもかかわらず、7月から、横田基地周辺の住宅地上空で訓練が再び繰り返されています。
世界を見まわして米軍の軍用機が人口密集地上空で、超低空を飛び回り、急旋回や編隊飛行を繰り返している国があるでしょうか。横田基地の訓練の実態は異常極まりないものです。
CV22オスプレイは、2018年4月にいきなり5機持ち込まれ、10月に正式配備されてから悲惨な墜落事故を起こした23年11月29日まで、わずかな期間に緊急着陸・部品落下事故などを頻繁に繰り返しながら、超低空飛行、急旋回飛行などを繰り返し、夜間は基地に戻ってホバリング飛行を行い、地域住民に大きな不安と騒音被害を与え続けています。
繰り返されるパラシュート降下訓練
2012年1月、突然始まった横田基地での輸送機C130Jを使ったパラシュート降下訓練は、沖縄県民・北谷町民の20数年に及ぶ長期のパラシュート降下訓練反対のたたかいによって、町長が引き受けた伊江島を例外として、県外に追い出されたものでした。
CV22オスプレイ横田配備も同じで、米軍の予定では、2013年から14年に特殊作戦部隊がもともと配置されていた嘉手納基地に配備予定だったものが、普天間基地へのMV22オスプレイ配備反対のオール沖縄の大闘争と、その力で沖縄の全自治体を巻き込んで作られた「建白書」の威力で、嘉手納基地から横田基地配備へと変えられた結果でした。
沖縄県民のたたかいは、県民に襲いかかる危険を取り除く大きな力を発揮しているのです。
一方、なんの取り決めもないまま危険を押し付けられた横田基地では、パラシュート降下訓練は、自衛隊の訓練と一体化し、地元自治体の反対の声を無視し、当たり前のように続いています。
横田基地を使い大規模な空中給油訓練
太平洋のかなたの本土から横田基地へやってくる大型空中給油機は何をしているのでしょうか。アメリカはアジアから見れば太平洋の遥か彼方の国。ヨーロッパからは大西洋の彼方の国。この国は、自国が戦火に見舞われない位置にあることをよく知っていて、20世紀の2度の世界大戦を経て、英国をぬいて、軍事的にも経済的にも世界最大の覇権国家となりました。
アメリカは、圧倒的な軍事大国として、海外軍事基地515カ所を維持し、45万人を派遣、常に軍事的優位をめざしています。特に、近年中国に対する圧力を強めています。
そのため西太平洋の上空は米軍の爆撃機が常時飛び回り、警戒しているのです。それら航空機への給油は、太平洋・東シナ海上空でなされており、沖縄が主な給油基地でしたが今は、横田基地にも大きな給油施設を造り、空中給油機を多数送り込んできて、守りを固めています。
猛スピードでなされる戦闘機への空中給油は、極めて危険ですから海上でなされますが、横田基地から飛び立った岩国基地所属のF35ステルス戦闘機への給油訓練が、甲府市上空でなされていることが山梨県民の告発で明らかとなり大問題になりました。
日米同盟は日本を守るという大うそ
米軍高官が、米国議会で予算を確保するために繰り返していることは、「日米安保」によって日本に配備されている米軍は、米国を守るためのものであって、日本を守るためのものではないということです。
だから米国政府は、日本政府に自衛隊を強化するために軍事予算を大幅にふやせというのです。だとしたら、戦争の危険しか作り出さない米軍の施設・基地は日本にはいらないではありませんか。今こそ米国言いなりの軍事同盟=日米安保条約から脱却し、ASEANから学び、グローバルサウスと共同し、非同盟中立の国へと新しい歩みを作り出すべきではありませんか。
長い間基地周辺にお住まいのみなさんの中には、「米軍がいるから安全だ」という思い込みがあるようです。しかし、現実は全く違います。米軍基地ほど危険なものはありません。
私たちの国・日本は、憲法で絶対に戦争しないことを世界に向かって宣言している国です。ですから、本来攻めてくる国などありません。
私たち国民が戦争反対の声をあげ続け、あくまでも憲法9条を守りぬく限り日本は安全なのです。逆に、戦争を呼び込む米軍基地など全く不要です。
1959年3月、新安保条約反対の大闘争の最中、立川基地拡張反対の大闘争、砂川裁判で下された東京地裁の伊達裁判長の歴史的な「安保条約違憲判決」を今こそ生かすときです。
今回触れられませんが、横田基地が汚染源であるPFAS問題も深刻です。