2012年7月19日木曜日

  リニア新幹線は必要か
      検討すべき課題が多くあるのに
長崎眞人さん
町田革新懇常任世話人

「町田市の地下40mを東西に横断して新幹線のトンネルが通る」大問題であるにも拘らず、市民には殆ど知らされないまま、建設が進められようとしています。国土交通省の指名を受け、建設と営業を担うJR東海の手で、現在環境アセスが実施されていて、2014年には着工する計画です。
これがどんな問題を孕んでいるかを検討し、市民の皆様にお知らせしたいと言う事で町田革新懇が6月3日町田市民フォーラムで標記のシンポジュウムを開催しました。
会員の物理学者(榊原道夫)、地質学者(坂巻幸雄)、大森典子(弁護士)、税理士(長崎眞人)が夫々専門の立場から解明した、その問題点のあらましを以下に報告します。
建設費は9兆円余
.我が国の大動脈とも言うべき主要鉄道路線の新設で、建設費9兆円余の空前の大事業にも拘らず、殆ど知らされないまま建設が進められようとしているのは何故か?
JR東海と国交省は、災害対策として2系統にすると言うが、防災を言うのであれば建設に30余年もかかる新線建設よりも現在の東海道新幹線の補強工事を優先すべき事は明白だ。
需要見込みは皮算用
東京―名古屋間を40分、大阪までは67分の超スピードで結び、3大都市圏を一つにすると言うが、結局、東京集中を促進するだけ。東海道新幹線の座席利用率60%強に留まっている上に、格安航空との競争が激化している現状で、需要見込は極めてずさんな皮算用に過ぎない。
電磁波の安全は
「超伝導磁気浮上方式」と言う世界最初の技術を採用するが、強力な電磁波が乗客の安全と近隣に及ぼす影響について、十分な検証がない。
原発3基分以上の電力を消費するのも時代に逆行。
無人運転で、地上からの遠隔操作によるが、万が一の事故発生の場合の避難誘導等の対応は全く軽視されている。
自然を破壊する危険
多摩丘陵はじめ山梨・長野の山岳地帯の貴重な自然を破壊する危険が大きい。
特に南アルプスを貫通し、中央構造線と糸魚川―静岡構造線と言う日本列島最大の断層を横断するルートは防災上も大問題。
地域振興に重荷
地域開発を言うのはマヤカシだ。リニア新幹線は一途にスピードを旨としていて、中間駅に止るダイアは少数。
現東海道新幹線は「のぞみ」の客を新線に移し「ひかり」「こだま」中心に再編成して地域の新規需要を掘起こすと言うが疑問。リニア新幹線へのアクセスを中心にした新たな地域計画づくりは、自主的な地域振興をかき回し経済的な負担だけをもたらす。
原発と同じ「利益共同体」
「建設費は全額会社負担でやるのだから、営業の自由を阻害しないよう国交省に確認した」と株主総会で公言。一方、旧国鉄債務の国庫負担が18兆円もまだ残されている事は無視。「利益を確保した上で必要あれば運賃値上げも検討する」と予め株主に約束。「公益事業」に従事する使命感は皆無。「親方日の丸」で赤字が出れば国民に転嫁する根性だ。
その背後にあるのは大手金融機関と東芝、日立、三菱等の大資本。原発と全く共通した顔ぶれの「利益共同体」だ。
町田への影響は
ルートが通る町田にとっては、径30mの立坑と100m四方の工事場が、公園緑地、学校、病院、福祉施設等の多い北部丘陵地帯に1-2か所設けられ、更にこれにアクセスする道路を走るダンプの交通被害が予想される。トンネルから排出される膨
大な量の残土処理も問題。
一方リニアを利用するには品川まで出るか、橋本を利用するかだが、いずれでも時間も運賃も余分に掛り利用価値はない。
「百害あって一利なし」。着工前に世論を喚起して阻止する以外にないと言うのが、シンポの結論でした。