2012年3月2日金曜日

「貧困と格差」のない社会をめざして⑤                             「青年の雇用困難と貧困」


首都圏青年ユニオン委員長 武田 敦

社会全体に可視化 
「青年労働者の半分が非正規である」という絶望的状況に警鐘がならされて以来、未だ社会は抜本的な解決に向かっていない。07年末のリーマン・ショックを理由とした派遣切りに、多くの派遣労働者が行き場を失い絶望した。そんな中で「年越し派遣村」などを通して、派遣切りの問題や貧困の問題が社会全体に可視化され、「こんな社会はイヤだ」「人間らしく働きたい」という人々の希望と願いは政権交代に託された。

派遣切りを許さず
首都圏青年ユニオンでも、当時三菱ふそうトラック・バス株式会社に派遣され、製造業の現場で働いていた原告2名が派遣切りにあい、裁判闘争を闘い抜いた。会社寮を追い出されそうになりながらも、昨年夏、三菱ふそうの裁判は高い水準で勝利解決した。だが全国的にも派遣切り裁判はいまも広がり、引き続き闘っている方々もいる。

派遣法の「抜本改正」を
政権交代後も派遣法の抜本改正もできないままに、今も派遣労働は青年を中心として根強く定着している。現行の派遣法は、裁判判決にも大きく影響を与えており、労働者の権利向上のためには、ふたたび抜本改正に向けた政治運動・社会運動を必要としている。

貧困の要因は非正規労働
派遣労働者や有期雇用労働者は、その低賃金と不安定さから、貧困の要因のひとつに挙げられる。特に日本では、派遣労働や有期労働への規制が緩く、賃金水準の低さと退職後の社会保障が不十分であるために、「仕事を失う=生活ができない」という構図が典型化した。青年ユニオンへの労働相談も、「仕事を失って生活ができない」「今の仕事をクビになりそうだが、貯蓄がないから辞められない」といった事情で、同時に生活相談も考えながら対応しなくてはいけない状況が続いている。首都圏青年ユニオンは、そういった労働相談から、多くの会社と交渉し解決を図っている。

厳しい若者の実態
しかし残念ながら、会社との交渉を経て高い水準の解決がなされても、次の仕事がなかなか見つからなかったり、前の職場でのパワハラが原因で病気や体調が戻らないなど、抜本的な雇用問題が青年労働者の前に立ち塞がる。また、当面の収入源である失業手当も、若年者の場合そもそも働いていた時の給与水準が低いため、失業手当の給付金水準が生活保護水準を下回ることは珍しくない。年収200万の労働者が失業手当をもらっても、月額12万円に届かない。貯蓄があれば補填しながら就職活動はできるだろうが、前述のように貯蓄すらままならない労働者は多い。

貧困からの救出と貧困是正は急務
貧困と格差の撲滅は、すぐには実現はしない。しかし、貧困からの救出と、格差の是正は、社会全体の問題として実現可能な課題であり、そのための行動を義務として実践していかなければならない。震災と原発事故によって「持続可能な社会」が様々な分野で取り上げられている。「人らしく働き生きたい」「貧困はイヤだ」の声が求めている社会は、誰しもが安心して生きていける「持続可能な社会」の一側面だ。
私たちの世代から、さらに若い世代、これから生まれてくる子どもたちにバトンタッチできていける社会を目指すことが、貧困と格差を考えることにつながるのは言うまでものない。青年は可能性のかたまりだ。そのことに希望を見出して多くの人々と運動を進めていきたい。




          <昨年12月に開かれた三菱ふそう裁判の
                                                勝利報告集会>