2020年6月2日火曜日

小池都政の教育はどうであったか
石原都政の継承と人材育成への傾斜
    東京革新懇代表世話人・都教組元委員長 工藤 芳弘

「教育目標から憲法・教育基本法を削除した東京
小池都政が誕生して4年になります。「都民が決める。都民と進める」と公約した小池都知事は、東京の教育をどのように推し進めてきたのでしょうか。東京の教育の実態とともにそれを検証してみたいと思います。
2001年、石原知事が都教委の「基本方針」から「日本国憲法及び教育基本法の精神に基づき」の文言を削除。そして、「教育目標」の前文に「わが国の歴史や文化を尊重し国際社会に生きる日本人の育成」を付け加えました。教育基本法改悪で示された、「愛国心」教育の押し付けや教育への行政が全面的に介入するという方向を、東京都は国に先駆けて行ったのです。小池知事もこれを引き継ぎ、学校現場への「日の丸・君が代」の強制、特定教科書の押しつけ、性教育への弾圧など、権力による教育内容への介入、管理統制を強めてきました。

東京の教育施策は学校を疲弊させている
東京都は、指導力不足教員制度や業績評価に基づいた「人事考課制度」を全国に先駆けて実施。さらには職の分化だとして主幹制度・主任制度を導入。教員を校長、副校長、主幹教諭(指導教諭)、主任教諭、教諭という職階制をつくりました。これによって、教職員の協力・共同の教育から上意下達による教育が行われるようになりました。子どもにとってはみな同じ先生なのに、小池知事は、これらの政策を踏襲しています。
職員室は、子どもを語らう場から命令伝達の場となり、教職員の同僚性は失われつつあります。それに追い打ちをかける悉皆の「学力テスト」が、競争と管理の教育をさらに強めてきました。このような東京の教育現場で、教職員メンタルヘルスの問題が深刻化しています。
教員採用に目を向けると、今年度の小学校教員採用選考名簿登載者は、1614人で2・1倍。このほかに1年間の期限付任用教員881人が名簿登載されており、これを含めると実質倍率は1・3倍という低倍率となりました。東京で教員になることに魅力がないということを、この倍率が如実に語っています。東京都の教育施策が、その根本にあることは明らかです。

東京の教育条件整備は
 教育条件整備に関していえば、少人数学級実施という課題があります。東京では、小学校1・2年生と中学校1年生で35人学級を行っていますが、これは全国で最低規模の実施です。小池知事は、「グローバル拠点都市は東京」などと言っていますが、欧米では30人以下が当たり前。グローバルを言うのならこの課題解決することがグローバルです。コロナ感染対応対策の観点からも、少人数学級の実施は喫緊の課題といえます
 また、特別支援学校での教室不足の問題も解決されていません。現在も800以上の教室が足りず、カーテンで1つの教室を間仕切りして2つの教室として使用するなどの事態が放置されたままです。
 私立高校の授業料の補助の所得制限は910万以下までに緩和されましたが、約5割の生徒が依然対象外となっています。

「東京都教育ビジョン」東京の教育はどうなるのか                          
東京都は、ICTやAIなどを駆使するとした国のSociety50に追随した「東京都教育ビジョン(第4次)」を発表し、そのための人材教育に積極的です。都立高校の再編計画や小中高一貫校などで、ICT活用した教育が具体化されています。しかし、Society50の大本には、新たな成長産業による巨大市場が企まれています。公教育がそこに組み込まれれば、公教育への企業参入、教育の市場化がさらに進み、その結果、学力の格差がさらに広がる懸念があります。
東京の教育がどうなっていくのか。「人格の完成」をめざす教育なのか、「人材育成」の教育なのか、今後の最重要テーマとなります。