餓死をうまないまちづくりに取り組もう
東京民医連事務局長 千坂和彦 相次ぐ孤立死報道
この間、札幌市、さいたま市に続き立川市で2件の孤立死が報道されました。その後も足立区や川口市など毎週のように続いています。これらは、いずれもマスコミで大きく取り上げられたものだけであり、都市部を中心にたくさんの事例が隠れていると考えられます。
その実態は
立川市の2件は、私たち民医連の事業所とそれほど強い結びつきではありませんでしたが、受診歴や相談歴がありました。
最初は、2月13日に発見された45歳の母親と4歳の障害を持つ子どもさんでした。子どもさんのインフルエンザ注射などを通じて共同組織に加入されており、毎月発行する機関紙を配布していました。しかし、オートロックマンションであり、ポストに投函する以上の接点は持ち得ませんでした。
その1カ月もたたない3月8日には95歳の母親と63歳の娘さんが亡くなられているのが発見されました。母親には認知症があり、介護する娘さんから、受診されたクリニックより介護保険利用について相談を受け、連携する介護事業所を紹介しましたが、利用するまでいたりませんでした。この集合住宅の自治会長さんは困った方には自ら差し入れをするほど熱心な方でしたが、救えなかった事を大変残念がっていました。
この一連の孤立死は日本の、高度経済成長期に地方から都市部へ大移動した方々が高齢化しつつあり、新しくできた地域ではコミュニティーが十分形成されない事など、様々な要因が挙げられています。町内会役員からは「町内会に入らず、干渉を嫌がる人が増え、誰が生活困窮者なのか把握するのが難しい」、行政からは個人情報保護法が大きな壁になっているなど様々な課題も指摘されています。
福祉政策の充実こそ
たしかに、町内会に入らない等コミュニティーの問題はありますが、私たちは社会的な要因が大きいのではないかと考えています。
母娘の場合、経済的事情から介護保険の利用をためらったという話です。ギリギリの生活で、お金がかからないように近所付き合いを極力減らそうとする傾向が強まっています。45歳の方の場合、障害をもつ子どもさんを表に出したがらないという事でした。(写真 左から2人目が千坂氏)
この方々の場合、障害を持った人々を社会的にしっかり支える社会福祉政策、貧困と格差を是正し、必要な施策を気兼ねなく使える社会になれば、社会的接点も増え、孤立死の可能性を小さくできるのではないでしょうか。
国のあり方の見直しを
この10数年来、アメリカと同様に日本でも多くの富がほんの一握りの人びとに集中し、構造改革路線による「貧困と格差」が拡大しています。政権は、民主党に代わりましたが、財界やアメリカ言いなりで、社会保障制度が縮小され暮らしの不安は増すばかりです。
孤立死を防ぐためには、国のあり方を抜本的に変え、誰もが安心して暮らせる社会をつくることです。私たちは、そのことを国や自治体に働きかけていく必要があります。
地域ネットワークの拡大
地域ネットワークの拡大
それと併せて、民医連の職員と共同組織の仲間が協力して、「安心して住みつづけられるまちづくり」をめざし、地域のネットワークを拡大していきたいと考えています。